畑発電所【農協系】
鳥取県 日野川流域の小水力発電所

畑発電所は、鳥取県日野郡日野町中菅にある小水力発電所です。
昭和33年、黒坂農協によって建設されました。
現在はJA鳥取西部を事業主体として、京葉ガスエナジーが管理運営を行っています。
少し前までは戦後間もないレトロ建築の趣を楽しむことが出来た(個人的)名物スポットも、令和4年3月に竣工した更新工事によって生まれ変わりました。
近隣にある農協系小水力と良く似た外観です。
あと細かい事ですが、建屋の看板にはシレッと「畑発電所」と表記されています。
もしかしてアレですかね。

小水力って友達に噂とかされると恥ずかしいし…(藤崎詩織)

ってヤツでしょうか?
更新しても最大出力が165kWだという事はわかっていますので、引き続き小水力・・・発電所 として扱っ…

ぽんきちくん ほんとに細かいですね。
どーでもいいじゃないですか、畑発電所でも何でも。
ちなみに国土交通省の発電データベースでは 黒坂小水力発電所 になってますから。

所長 ムキー!!

畑発電所|昭和33年、黒坂に建設された農協系小水力

1.所在地

日野町中菅畑地内にあり小河内、上菅、花口の三方からアクセスすることが出来ます。
中でも小河内からのアクセスが(比較的)楽な事もあって、私はこの道ばかり利用しています。

  • 道切りの結界
    2022-06-26
  • 鳥取県日野郡日野町中菅の頭首工
    2022-06-26
  • 鳥取県日野郡日野町中菅の頭首工
    2022-06-26

…しかし、アレですな。
見るべきものが多すぎてまったく道行きがはかどりません。
山間の水耕を支える名前もわからんような小堰堤であるとか、いい感じの橋、近江川と水路橋が交差してい(ドンッ)

ぽんきちくん とっとと行け!

畑発電所のマップ
地図を読み込んで操作する
出典:Google マップ / 地図データ ©2025 Google

2.取水堰堤と導水路

所長 場所の分かっている今となっては、なんという事の無い畑発電所の取水堰堤ですが…
少しだけ苦労話を挟んでも良かですか?

まず水力発電所について語るとき、その水が 何処から来ているか がものすご~く気になる訳です。
慣れてくると(慣れてなくとも)地形図を見るとか、まぁ事前に出来る事はたくさんあるのですが…
水力探索を開始して間も無かった頃の私は、あろうことか現地に行けばなんとかなるとかなんとか思っていました。

 .。oO(沈思黙考)
貯め池とかがある訳じゃないから水路式だよな?
という事はあの水圧鉄管の先っちょに導水路があって…
えーっと💦
そして近江川上流のだいたい同じような高さの場所に取水口がある筈だ。
Q.E.D. (証明終わり)

フンッ、楽勝じゃないか。

  • 畑発電所の水圧菅
    2022-06-26
  • 畑発電所の導水路
    2022-06-26
  • 畑発電所の取水堰堤
    2022-06-26

…結果的にはもの凄く大変でしたので、こうしてわざわざ告白しています。
上述したような得体のしれない取水堰堤が至る所にあり、その度に立ち止まっては虱潰しに確認する必要があったからです。

ぽんきちくん そんな方法でも結局たどり着いちゃうとか、なんかもう一周回って天才ですよね。

所長 いやぁそれほどでもな

ぽんきちくん 褒めてませんよ?
あとまるで今は違うみたいな言い方ですけど、とりあえず現地で考えようっていうスタイルは変わってませんから直してください。

無視。
ちなみに地理院地図やGoogleマップには導水路がバッチリ写っています。
ここで今回ひとつめの格言。

ちゃんと地図を見よう…いやマジで

そして上記山腹水路の写真から、発電所の更新工事に伴い余水吐きも新調されていることがわかります。
地図によると途中水路隧道があることになっており、是非ともこの目で見たいところではありますが、これ以上はやめておくことにして引き返しました。

3.沿革と旧緒元

まず日野町誌から一部抜粋します。

戦後日野郡では農協経営による小水力発電所が、日野上村、石見村などに建設され、本町でも黒坂地区、根雨地区にそれぞれ畑発電所、根雨小水力発電所(金持)を設け、中国電力株式会社に売電を行っている。

…中略

農林中金の融資と自己資本によって、日野農協は金持、黒坂農協は畑地内、それぞれ建設したもので、事業内容は次のとおりである。

発電開始日
昭和33年12月25日
発電常時出力
142kw(恐らく最大出力)
売電料金
3円10銭
売電料
3,678,593円(昭和34年度)
日野町誌(昭和45年)

所長 因みに平成30年の消費者物価指数は昭和33年の凡そ5.84倍ですので、上記の金額を消費者物価基準で現代の感覚に換算すると、

売電料金
18円/kWh
年度売電料
21,500,742円

となります。
また、経産省発表による200kW未満の中小電力発電、令和元年の売電価格は34円+税。
つまり売電による所得税を無視してザクっと計算すると約11倍ですので、売電価格基準だと、

年度売電料
40,345,858円

推定値に幅があるので何とも言えませんが、今の感覚で大雑把に年間3千万円(±10M)程度の収入が見込まれる発電施設として運用されていたと考える事ができます。
ついでにもう一つ参考まで。
近隣にある黒坂発電所の最大出力は(旧)畑小水力発電所の142kWに比べて約100倍の15,000kW。
俣野川発電所に至っては8,450倍です。
これに関して言えば比べる意味などありませんが、小水力発電のこぢんまり感が伝わるでしょうか。
発電所にはそれぞれ得手不得手というのがあるのです。
次に、発電所敷地内(⛔立禁)にある碑文を望遠撮影して、そのまま引用します。

発電所竣工記念碑

畑発電所竣工記念碑
2022-06-26

昭和32年4月役員会の決議に依り小水力発電事業を企画し次で同年5月通常総会に提案決議決定の上之斯道の権威者廣島市イームル工業社長織田史郎氏に出張を願い現地調査により有望なりとの結果を得、縣砂防課有田技師に依り實地測量を施行、更に具体的計画を樹立し同年8月全役員一丸となりて関係各方面に陳情運動を展開せり、この間縣廳、中電、通産局等関係上級機関に於ても非常なる支援を受けたるもこの事業の性格上その推進途上に於て頗る難関にも遭遇シ挫折の止むなきに至るやの場合も屢々有りたるも熱誠努力はよく之を克服シて、昭和33年4月各機関より建設の認可措令を受くるに至り5月14日工事施行の入札を行いたる結果鳥取市株式会社藤原組に落札シ諸契約を結び5月23日劃期的大事業の起工式を擧行シ愈々本格的工事に着手せり爾来地元部落並に組合貟の協力と役職貟一致協力と伴せ施工者株式会社藤原組の努力により12月19日全工程を完了シ同25日関係各廳の竣工検査を受けて茲にこの歴史的大事業の竣工をみるに至りたるにつき之を記念シその概要を誌す

昭和33年12月30日

黒坂町農業協同組合

工事施工者
鳥取市 KK藤原組
機会納入者
廣島市 イームル工業KK

碑文の内容から時系列をまとめると以下のようになります。

S32/04/??
企画
S32/05/??
総会にて決定
イームル工業社長織田史郎氏による検分
 ⇨ 有望との回答
  ⇨ 県砂防課有田技師による実地測量
S32/08/??
陳情開始
S33/04/??
認可
S33/05/14
工事の入札
 ⇨ 藤原組が落札
S33/05/23
起工式
S33/12/19
工程完了
S33/12/25
竣工、発電開始

4.近年の動きと新しい緒元

令和3年から以下のように設備更新が進められ、翌年から売電開始。

更新着工
令和3年4月
竣工式
令和4年3月15日
売電開始
令和4年1月
発注者
鳥取県西部農業協同組合
京葉ガスエナジーソリューション
施工主
㈱T・M・S
発電機
横軸フランシス
最大出力
165kW
売電料金
34円(再エネ特措法により)
年間発電量
120万kWh
年間売電料
40,800,000円
工事期間中7月の様子
  • 更新中の畑発電所
    2022-07-25
  • 更新中の畑発電所
    2022-07-25
  • 更新中の畑発電所
    2022-07-25
  • 更新中の畑発電所
    2022-07-25

よーく見てみると、水圧管路の向かって右隣にモノレールが敷いてありますね。
果樹園などで常設してあるのを見るのも楽しいですが、こういった「今だけ!」の工事用モノレールっていうのも楽しい。
そして最後に、こちらが現在の様子と旧建屋となります。

現在の様子と旧建屋
  • 畑発電所
    新/2022-06-26
  • 畑発電所
    新/2022-06-26
  • 旧畑小水力発電所
    旧/2019-11-16
  • 旧畑小水力発電所
    旧/2019-11-16
  • 旧畑小水力発電所
    旧/2019-11-16

特に、どれだけレタッチしようとも残念なこれら3枚が、手持ちで全ての写真となってしまいました。
それでは2つ目の格言。

いつまでもあると思うなレトロ建築

合掌。