川平発電所と川平第二発電所【中国電力系】
鳥取県 日野川流域の小水力発電所
川平発電所は中国電力の完全子会社であるESSが所有する小水力発電所で、鳥取県江府町久連にあります。
広島電気によって昭和6年に建設された、日野川水系でたぶん4番目ぐらいに古い水力発電所です。
現役のものとしては2番目の古参ですね。
ちなみに建設当初は最大出力が1,250kWでした。
ところが、何か思うところでもあったのか令和2年、ESSに移管すると同時に設備を変更。
FIT制度が適用され、現在は最大出力198kWの
また川平発電所の存在を複雑にしている川平
- ※ESS
- 株式会社エネルギア・ソリューション・アンド・サービス
2001年、中国電力の100%出資子会社として設立された総合エネルギー企業 - ※4番目ぐらいに古い
- 1番目は旭発電所
- 2番目は選奨土木遺産の江尾発電所
- 3番目は根雨電気の津地発電所
1.川平発電所の外観
実は 川平発電所の外観 という捉え方については少し複雑な事情が絡むのですが、とりあえず 建屋 及び関連する他の写真を以下に示します。
昔は発電機が建屋内にありましたので「建屋=川平発電所」と言って差し支えありませんでした。
しかし令和3年に竣工した改修によって、なんということでしょう…発電機が建屋からはみ出してしまいましたので、おそらく現在は「発電機=川平発電所」という状況になっています。
なぜこのようなことになっているのかというと、以下少なからず私の推測ですが、昭和54年、新川平発電所が運転を開始したことによって、旭発電所と同じく川平発電所も減水区間となってしまいました。
更に平成18年、川平発電所の余水を活用する形で川平第二発電所も運転を開始しています。
つまり昭和6年の運転開始当初より減少した流量をより効率よく、よりコンパクトに活用することで2つの小水力発電所を稼働させているというのが現在の状況であり、そのため、少しでも有効落差を稼ぐために発電機が建屋からはみ出してしまっているのです。
おそらく。
実際令和3年の改修前は有効落差が9.55m、改修後は9.643mと、9.3㎝ほど余計に稼ぐことができるようになっています。
もちろんイームル工業製の水中タービン発電機を導入するなど、高効率化の工夫はそれ以外にも施されていますが、涙ぐましい努力で有効落差を稼ぐという小水力発電の宿命を如実に表しているのではないでしょうか。
2.所在地
取水ダムは道の駅奥大山の西側にあって、取水口や排砂ゲートなど主なギミックは川向こう、日野川左岸に固まっています。
国道からはぜんぜん見えませんので、レミコンさんとこの横道に入って鉄穴橋を渡りましょう。
橋を渡って突き当りの丁字路を…
- 左👈
- 選奨土木遺産の旧江尾発電所
- 右👉
- 目的地の川平堰堤と川平発電所&川平第二発電所
です。
発電所は堰堤を通り過ぎた先、基本川に沿ってまっすぐなのですが道が狭いので注意。
そして地図はこちら。
3.川平堰堤
堰堤行きます!
(0゚・∀・)ツヤツヤ ⇦ 堰堤が好き
ゆるい越流提に魚道、そして左岸の排砂ゲート。
日野川本流にある主要な水力発電所の取水堰堤は、何故かだいたいこの並びになっています。
昭和6年に竣工してから長年の風雨に耐え、元々年季が入っていたところに2018年の台風24号。
止めを刺されてしまいました。
台風通過の際に右岸(国道側)の法面が崩壊…、なんかいろいろと間一髪でした。
その後、法面の修繕とたまたま同時だったのか、それともついでだったのかESSへ移管のタイミングで改築が施され現在の姿に。
あの足ツボに良さそうなツブツブって何ですか?
うん、気持ちよさそうだよね^^
えーとあれは…
扇型魚道 っていうらしいぜ。
参考までに、何気に貴重な改修前の図面もこちらに埋めておきます。
因みにここ川平堰堤随一のチャームポイントである取水口。
ゆるいカーブを描くカベがみどころです。
広義での水制工にあたるんじゃないですかね。
4.導水路、水槽、放水口
5.新旧の緒元
ここから座学です。
まずおなじみの広島電気沿革史(昭和9)
から。
第七章 事業狀態
【川平電所】
本發電所は、舊山陰電氣の保有せし水利権を本社に於て繼承し、日野川水系日野川本流及大谷渓流を利用し、江尾發電所の下流鳥取縣日野郡江尾村大字久連字川平に新設せるものにして、昭和五年六月工事に着手し、昭和六年八月落成同月十九日仕様認可を得て運轉を開始し、最大一,二五〇「キロワツト」を發電しつゝあり。
設備の概要を述ぶれば左の如し。
- 使用河川名
- 日野川
- 使用水量
- 六二五立方尺
- 有効落差
- 三一.五尺
發電機
- 容量
- 一,五六二K,V,A,
- 電壓
- 三,三〇〇(ヴォルト)
- 回轉數
- 二五七回轉(毎分)
- 周波數
- 六〇(サイクル)
- 箇數
- 一臺
- 製造者名
- 日立製作所
水車
- 種類
- 竪軸單放水「プロペラータービン」
- 馬力數
- 二,〇〇〇馬力
- 調速機ノ種類
- 壓油式自動調速機及自動水位調整期並用
- 箇數
- 一臺
- 製造者名
- 日立製作所
また、内容はカブりますが最終攻略本である中国地方電気事業史(1974)
からも引用しておきます。
加計発電所完成のあと、川平発電所(出力1,250kW)と栗栖川発電所(2,500kW)があいついで建設された。
川平発電所は、旧山陰電気が保有していた水利権を継承し、日野川水系日野川本流および大谷渓流を利用、鳥取県日野郡江尾村大字久連字川平に昭和6年8月竣工をみたもので、国産初のカプラン水車を採用した全自動発電所であった。
その他の引用は、緊急性が感じられませんのでたたんでおきます。
クックック…あなたもスキモノですねぇ。
わざわざこんなところまで見るなんて。
いろいろなところに点在している情報を一ヶ所にまとめただけですので、こんなところを読んでもまったく面白くありませんよ?
まぁよいでしょう。
中国電力の 報道資料 に移管前の緒元が記載されていましたのでまず引用します。
- 発電形式
- 水路式
- 最大出力
- 1,300kW
- 最大使用水量
- 17.39㎥/s
- 有効落差
- 9.55m
- 運転開始年月
- 昭和6年8月
- 所在地
- 鳥取県日野郡江府町
敷地内の標識から現在の緒元。
- 名称
- 川平発電所
- 所在地
- 鳥取県日野郡江府町大字久連977
- 発電出力
- 198kW
- 運転開始
- 2021(令和3)3月31日
- 発電形式
- 水路式
ESSによる運転開始の報道資料。
- 発電所名
- 川平発電所
- 発電形式
- 水路式
- 最大出力
- 198kW
- 最大使用水量
- 2.5㎥/s
- 有効落差
- 9.643m
- 運転開始年月
- 令和3年3月
中国電力時代の緒元について、電力土木技術協会様のデータベースからも情報を補填しながらまとめます。
中国電力資料より
- 発電所名
- 川平発電所
- 発電形式
- 水路式
- 最大出力
- 1,300kW
- 最大使用水量
- 17.39㎥/s
- 有効落差
- 9.55m
ゼンリンより
- 所在地
- 鳥取県日野郡江府町久連977-2
廣島電氣沿革史より
- 運転開始
- 昭和6年8月19日
- 水車
- 竪軸単放水プロペラータービン×1
- 2,000馬力
- 日立製作所
- 発電機
- 1,562kVA
- 3,300V
- 257回転/m
- 60サイクル
- 一基
- 日立製作所
電力土木技術協会データベースより
- 設置形式
- 地上式
- 建屋構造
- 二床式
- 発電方式
- 流込み式
- 取水位
- 125.75m
- 放水位
- 115.14m
- 導水路総延長
- 1,019.3m
最後に、ESSが管理運営している令和4年現在の緒元。
どう考えても変わっているはずの無いものは(同上)とします。
- 発電所名
- (同上)川平発電所
- 発電形式
- (同上)水路式
- 発電方式
- (同上)流込み式
- 最大出力
- (ESS)198kW(DOWN⇩)
- 最大使用水量
- (ESS)2.5㎥/s(DOWN⇩)
- 有効落差
- (ESS)9.643m(UP⇧)
- 運転開始年月
- (ESS)2021(令和3)3月31日
- 所在地
- (検分)鳥取県日野郡江府町久連977(※3)
- 水車
- (ESS)水中タービン発電機×1(※4)
- 取水位
- (同上)125.75m
- 放水位
- (同上)115.14m
- 導水路総延長
- (同上)1,019.3m(※5)
- ※3
- 屋外に移設された発電機(発電所)には番地977、またゼンリン地図では建屋が番地977-2となっています
- ※4
- 川平第二発電所の水中タービンがイームル工業製(ESS報道資料、後述)
外観的にも瓜二つですので難しく考えず同社製と考えてよろしいかと- ※5
- 発電機(発電所)が屋外に移設されたので少し伸びているかもしれません
特に書き出すとすれば…最大出力が198kWにダウンしている事ぐらいです。
どちらにしても最後の沿革のところでサラッとなぞりますので飛ばしちゃってください。
6.川平第ニ発電所
ここ大事なところです。
慎重にやりましょう。
川平第二発電所は、中国電力によって建設され平成18年より運転を開始した小水力発電所です。
その名の通り川平発電所に併設し、その余水を有効利用する目的で開発が計画されました。
そしていいですか?
落ち着いて聞いてください。
見た目的には、発電機のついた水圧管がニョキっと地上に露出しているだけですので、発電所と呼ぶには強い抵抗を感じる事でしょう。
しかしあくまで発電所です。
…
…
…
…
…
よろしい。
他に特記事項として、
RPS法対象設備として中国電力が開発した初めての水力発電所である
水中タービン発電機、FRPM水圧管などを採用し低コストで建設された
というのがあります。
以下緒元は中国電力から発表された建設工事開始と営業運転開始のプレスリリース、及びその他から。
- 発電所名
- 川平第二発電所
- 発電形式
- 水路式
- 発電方式
- 流れ込み式
- 水車・発電機
- イームル工業製水中タービン発電機
- 最大出力
- 120kW
- 最大使用水量
- 1.6㎥/s
- 有効落差
- 9.27m(技術協会dbより)
- 水路延長
- 約6m(取水口)
- 約39m(水圧管路)
- 約6m(発電所)
- 約4m(放水路)
7.年表「川平発電所に関連する出来事」
データが揃いました。
川平発電所、川平第二発電所、そしてそれらを取り巻く周辺の出来事を時系列順に並べてみます。
- 1930年/昭和5年6月
- 広島電気が、山陰電気から水利権を引き継ぎ川平発電所の建設を開始
- 1931年/昭和6年8月19日
- 川平発電所が落成、運転開始
- 最大出力は1,250kW
- 1941年/昭和16年8月30日
- 配電統制令により広島電気は解散し中国配電となる
- 川平発電所の事業主が中国配電に
- 1951年/昭和26年5月1日
- 日本発送電中国支社⇔中国配電の合併により中国電力設立
- 川平発電所の事業主が中国電力に
- 2002年/平成14年
- RPS法施行
- 電力事業者に対して新エネルギーの利用が義務付けられる
- 2005年/平成17年3月17日
- 川平第二発電所の建設を地元へ申し入れ
- 2006年/平成18年1月13日
- 川平第二発電所の工事計画届提出と着工
- 2006年/平成18年9月27日
- 川平第二発電所の営業運転開始
- 2012年/平成24年7月1日
- 再エネ特措法の施行
- 2019年/令和元年
- 中国電力が川平発電所をESSへ譲渡、FIT制度を適用し改修スタート
- 2021年/令和3年3月31日
- 川平発電所が最大出力198kWの小水力発電として営業運転を開始
8.感想戦
ねぇ所長。
前から思ってたんですけど、なんで同じ敷地内に発電所がふたつにあるんですか?
新エネルギーの利用を義務付けるRPS法に対応するために、余水を利用する第二発電所を急遽こしらえたとこまではわかるんだけど…
第一発電所を改築したときに198kWと120kW、2基の発電装置を備えた出力318kWの小水力発電所にすることは出来なかったのかなブツブツ
…
…
あっ💡
もしかして固定価格買取制度の調達価格、
- 200kW未満
- 25円+税
- 200kW以上、1,000kW未満
- 21円+税
っていうのになんか関係が(モガモガッ)
そこまでだ!
ふ~…アホなのか君は💦
黒い服を着た人たちが来て連れて行かれるぞ!
(((;゚Д゚)))ドキドキ
そそれではこここ今回はここの辺までにしておきたいと思いますアタフタ…
ここまではなんとなく農協系、中国電力系と続く流れでしたね。
次回からは第三セクター系に入って、新石見小水力発電所の話でもし
ガチャッ
…?
誰だ君たちは、勝手に入っ(ゴンッ🔨)
うっ…ドサッ
ズルズル…バタン!